過年度生として一級建築士の製図試験に再挑戦する場合、最も重要になるのは、何をいつやるかを明確にすることです。
製図試験は学科試験と違い、闇雲に勉強時間を増やしても合格できる試験ではありません。
作図、エスキス、計画の要点、設備や法規の知識など、短い期間の中でやるべきことが非常に多く、優先順位を間違えるとすぐに時間が足りなくなります。
特に過年度生の場合、「去年と同じ勉強をしてしまう」「課題をこなすだけの練習になってしまう」といった状態に陥る人も少なくありません。
こういった状態の人は本来伸ばすべき工程に時間をかけず、不合格になってしまう人もいます。
しかし、時期ごとにやるべきことを整理して取り組めば、限られた期間でも合格レベルまで力を伸ばすことは十分可能です。
この記事では、1年目にランク4で不合格→2年目に合格した僕自身の経験をもとに、
- 期間別のやるべきこと
- 本試験直前1週間の過ごし方
という期間ごとの勉強スケジュールを詳しく解説します。
過年度生として今年こそ本気で合格を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。
期間別のやるべきこと
課題発表(約3ヶ月前)までにやるべきこと
過年度生が合格を目指す場合、課題発表までの期間は基礎を固める最も重要な時期になります。
この時期にやるべきことは、大きく分けて次の4つです。
- 基本的な構造・設備要求を理解する(スパンとPC梁サイズの関係・空調方式と必要設備等)
- 作図をどんな課題でも2時間30分以内で完成させる
- 基本的な室の条件整理をマスターする(辺長比・可動間仕切等)
- 法規の試算手順の把握
製図試験では、エスキスの段階で
- 構造的に成立しているか
- 設備条件を満たしているか
- 要求室の条件が正しく整理されているか
といった内容を同時に検討する必要があるため、構造や設備の基本的な知識が曖昧なままでは、エスキスがいつまでもまとまらず、合格には程遠いプランになってしまします。
設計製図のプランニングというものは、構造・設備の上に成り立っていますからね。
また、作図に時間がかかる状態では、本来時間をかけるべきエスキスやチェックに時間を使うことができません。
過年度生はまず、「作図の安定化」と「基本条件の理解」を最優先で整える必要があります。
課題発表前の段階で、ランク4を確実に回避できるようになっていることが理想です。
また課題発表前の段階では、まだエスキスのスピードを求める必要はありません。
まずはどんな課題でも確実に図面を完成させられる力を身につけることが重要です。
この基礎が整って初めて、課題発表後の本格的なエスキス練習で大きく成長することができます。
作図スピードを上げる具体的な練習方法は以下の記事で詳しく解説しています。
ぜひご覧ください。
課題発表〜8月中旬にやるべきこと
課題発表後は、資格学校の講座に学科合格者が合流してくるタイミングです。
この時期はまだ、課題の難易度は比較的低く設定されていることが多く、本試験レベルの複雑な課題・初出題の条件はまだ出てきません。
つまり、7月~8月中旬までの時期は試験課題の傾向に沿った練習をする段階ではないということです。
この時期にやるべきことは、プランのレパートリーを増やすことです。
例えば次のようなテクニックです。
- 建物上階のセットバックによる高さ制限の回避
- 同面積の室を上下階で揃える配置
- CS(片持ちスラブ)の利用
これらの方法は、知識としては知っていても、「本当に使っていいのか分からない」「試験で使うのが怖い」という理由で実際には使えない人が非常に多いです。
しかし実際には、これらの方法を使うことで驚くほど簡単にプランがまとまるケースも少なくありません。
製図試験では、エスキスの引き出しが多いほどプランの自由度が上がります。
そのためこの時期は、完成度を求めるよりも使える技を増やすことを意識して練習することが重要です。
学校課題では、積極的に慣れていないテクニックを使用し、講師に添削してもらいましょう。
エスキスで使えるパターンを増やしておくことで、課題が難しくなってくる8月後半以降でも、プランの幅が広がり対応できるようになります。
8月中旬〜9月中旬にやるべきこと
この時期から、資格学校の課題は徐々に本試験レベルに近い難易度になっていきます。
そのため、この頃からはエスキスの完成度だけでなく、時間を意識した練習が重要になります。
具体的には、どんな課題でも2時間以内にエスキスをまとめることを目標に練習しましょう。
また、資格学校の課題では多くの場合、1課題につき1つは初めて見るようなプランニングが模範解答として提示されます。
この新しい要素こそが、課題の一番重要なポイントです。
課題に取り組むときは、まず時間内に仕上げることを第一優先にしてエスキスをまとめます。
そして復習の段階では、模範解答をただ確認するだけではなく、
- なぜこの室配置なのか
- なぜこの動線計画なのか
- なぜこのスパン割りなのか
といったプランニングのロジックを理解することが大切です。
模範解答には、配置の理由やスパン割の根拠までは詳しく書かれていないことがほとんどです。
そのため、「なぜこの配置になっているのか」を自分で考え、根拠を突き詰めていく必要があります。
こうして模範解答の考え方を自分の中に落とし込んでいくことで、
初めて見る条件が出題された場合でも、理に適ったプランニングができるようになります。
この時期は、単に課題をこなすのではなく、プランニングのロジックを自分の武器として蓄積していくことが最も重要です。
エスキスを2時間以内に完成させるための具体的な練習方法と意識は以下の記事で詳しく解説しています。
9月中旬〜本試験までにやるべきこと
この時期からは、計画の要点の暗記を始めましょう。
計画の要点は範囲が限られているため、集中して取り組めば2週間ほどで十分覚えることができます。
早すぎる時期から暗記を始めても忘れてしまうため、2~3週間前からのスタートで問題ありません。
また、最終の課題に近づくにつれて、課題の難易度は大きく上がっていきます。
初出題の検討要素が多く含まれる課題が増え、本試験に近いレベルの内容になってきます。
しかし、それまでの課題で模範解答のロジックをしっかり学んでいれば、的外れなプランになることはほとんどありません。
この時期は、新しく出てくる検討要素を確実にインプットしていくことを意識しましょう。
作図については、この時期から量より質を重視します。
作図は週に1〜2枚程度で問題ありません。その代わり、取り組む課題は内容を濃くし、必ずランク1を取る意識で仕上げることが大切です。
また、別案エスキスについても優先順位をつけます。
過去課題の復習であれば、1/1000の段階までで止めても問題ありません。
その分の時間を、難易度の高い課題の1/400エスキスに使うようにしましょう。
この時期は新しい知識を増やすというよりも、これまで積み上げてきた力を整理し、本試験で確実に発揮できる状態に仕上げていくことが重要になります。
本試験直前1週間の過ごし方
本試験直前の1週間は、新しいことを増やす時期ではありません。
これまで身につけた力を安定して発揮できる状態に整えることが目的になります。
まず、スキマ時間は必ず計画の要点の暗記に使いましょう。
計画の要点はランクⅡの原因になりやすいため、直前期は繰り返し確認しておくことが重要です。
作図については、最後に1枚だけ書く程度で十分です。
これは練習というよりも、本試験前のウォーミングアップとして行うものです。
実際の道具の状態を確認したり、手を慣らしたりする意味合いが強いです。
それ以外の時間は、できる限りエスキスに使いましょう。
製図試験では、エスキスが早くまとまるかどうかで合否が大きく分かれます。
直前期でも、新しいプランニングのテクニックを1つ覚えるだけで、エスキスが大きく楽になることがあります。
時間がある限りエスキスを行い、実戦で使える引き出しを増やしておくことが大切です。
また、前日はエスキスを行わないことをおすすめします。
前日に作ったプランがぼんやりと頭に残ってしまい、本試験で柔軟なプランニングができなくなる可能性があるからです。
前日は、
- 計画の要点の最終確認
- 高さ制限など法規関係の確認
といった暗記中心の復習にとどめておきましょう。
本番前日に無理に頭を使う必要はありません。
落ち着いた状態で試験当日を迎えることが、実力を発揮するためには何より大切です。
まとめ
過年度生が製図試験に合格するためには、闇雲に課題をこなすのではなく、時期ごとにやるべきことを明確にして勉強することが重要です。
まず課題発表までの期間は、構造・設備の基本理解と作図の安定化を最優先に行います。
どんな課題でも作図を2時間30分以内で完成させられる状態を作ることが、その後のエスキス練習を効率的にする土台になります。
課題発表後から8月中旬にかけては、プランニングの引き出しを増やす時期です。
セットバックやCSなどの技術を実際に使いながら、エスキスで使えるパターンを増やしていきます。
8月中旬から9月中旬は、エスキスの量を増やしてスピードを上げる時期です。
別案エスキスを繰り返すことで、プランニングの自由度が上がり、エスキス時間を短縮することができます。
余った時間でさらに多くの別案エスキスを繰り返すという好循環が始まります。
9月中旬以降は、計画の要点の暗記と初出題要素の整理を進めながら、試験本番に向けて仕上げていきます。
作図は量より質を重視し、エスキスの安定性を高めていくことが重要です。
そして本試験直前は、新しいことに手を広げるのではなく、これまで積み上げてきた内容を整理して確実に発揮できる状態に整えることが大切です。
製図試験は勉強時間の長さではなく、正しい順序で練習を積み重ねられるかどうかで結果が大きく変わります。
このスケジュールを参考に、自分の弱点を把握しながら効率的に勉強を進めていきましょう。
合格する人の特徴について知りたい方は、以下の記事からご覧いただけます。





コメント