一級建築士の製図試験に合格するためには、Ⅰ~Ⅳの4段階ある評価のうち、ランクⅠをとる必要があります。
しかし実際は、不合格になる人の多くはランクⅢ(著しい知識、能力不足)・ランクⅣ(重大な不適合)を取っています。
「ランクⅢ・Ⅳになるミスの条件」・「自分もしくは他の受験者が何をミスしてランクⅢやランクⅣになっているのか」
これが分からないまま勉強していると、同じミスを繰り返し、何度でも不合格になります。
実は、ランクⅢ・Ⅳになる人には明確な共通点があります。
この記事では、
- ランクⅢ・Ⅳになる人の特徴
- やってはいけない勉強方法
- 回避するための考え方
これらを解説していきます。
ランクⅢ・Ⅳを回避できるようになるだけで合格に一気に近づくため、ぜひご覧ください。
製図試験のランク分布
一級建築士の製図試験では、最も多い評価がランクⅢ・Ⅳとなっています。
つまり、多くの受験生が詳しく採点すらしてもらえない状態で不合格になっています。
ランクⅡで惜しく落ちる人も一部いますが、実際には「明確なミスによって不合格になる人」が大半です。
| 令和4年 | 令和5年 | 令和6年 | 令和7年 | |
| ランクⅠ | 33.0% | 33.2% | 26.6% | 35.0% |
| ランクⅡ | 6.1% | 2.1% | 1.5% | 1.6% |
| ランクⅢ | 32.4% | 22.1% | 23.9% | 53.7% |
| ランクⅣ | 28.5% | 42.6% | 48.0% | 9.7% |
| ランクⅢ+Ⅳ | 60.9% | 64.7% | 71.9% | 63.4% |
上の表は、令和4年~令和7年までの製図試験のランク分布です。
見て分かる通り、過去4年間のすべての年度においてランクⅢとランクⅣの合計割合が60%を超えています。
製図試験は学科試験とは異なり、減点方式の試験です。
ランクⅢ・ランクⅣになるミスの項目は毎年決まっているため、該当する「致命的なミス」をしない立ち回りが重要になってきます。
ランクⅢ~ランクⅣになる人の特徴
法令違反に対する危機感がない
エスキスでランクⅣになる典型的なタイプの人は、法規関係の違反がないことを確認せずに次に進むことです。
例えば、重複距離と歩行距離についてです。
これらの動線距離は、1/400の段階で規定を満たしておく必要があります。
しかし、法令違反に対する意識が低い人は、正確な距離を測らず作図に入ってしまいます。
そのため、作図段階で歩行距離の超過に気づいた場合、室の配置から検討し直さなければなりません。
法令違反に関する手戻りは大きな修正が必要となるため、作図時間が足りなくなる可能性が大きくなります。
容積率や建蔽率についても同じです。
面積関係は1/1000の段階で必ずクリアしておく必要があり、クリアしていない場合はヘリアキの検討・仮想床の検討からやり直すことが必須になります。
しかしランクⅢ・Ⅳになる人は、時間がもったいないからという理由でやり直さず、1/400で収めようとしてしまいます。
その結果、1/400プランニングが上手くまとまらず余計に時間がかかる上、結局1/1000からやり直すことになります。
このように、法令関係の確認を怠ることで、時間を短縮するどころか、逆に修正に多くの時間をとられて不利になります。
エスキスが未完成で作図に進む
次にランク4になる人の典型が、エスキスが未完成のまま作図に進んでしまうことです。
エスキスに時間がかかりすぎてしまうことが原因で、作図しながらその都度調整しようという発想の人がほとんどです。
しかし、作図の段階では室の配置・スパン割・動線計画といった根本的な内容はほとんど修正できず、修正した結果必ずどこかの辻褄が合わなくなります。
無理に作図で調整しようとすると、
- 図面が崩れる
- さらに多くの書き直しが発生する
- 最終的に時間内に完成できない
といった状態になります。
つまり、エスキスで時間を渋ったことで、結果的にさらに時間を失うことになります。
合格する人は、エスキスの段階で多少多くの時間がかかったとしても、
- 条件整理
- 法規、構造、設備のチェック
- プランの成立
を確実に終わらせてから作図に入ります。
製図試験では、「エスキスが完成していないまま作図に入る=自ら不合格の道に進むこと」と同じなのです。
条件整理が甘い
ランクⅢやランクⅣになる人は、条件整理が甘いままエスキスに入っていることが多いです。
製図試験では最初に課題文を読み取り、
- 主要室の配置
- 室の形状
- 動線
といった基本条件を整理します。
この段階でミスをすると、その後どれだけうまく作図しても、根本が間違っているためランクⅣになります。
原因として多いのは、
- エスキスで急ぎすぎている
- 課題文の読み取りが不十分
この2つです。
「早くエスキスに入りたい」という気持ちから条件整理を雑にしてしまい、結果として後戻りできないミスを抱えたまま進んでしまいます。
しかし、この工程は時間をかければ確実に防げる失敗です。
エスキス全体の時間は短縮すべきですが、課題文の読み取りや条件整理の段階だけは例外です。
ここを丁寧に行うことで、その後のエスキスと作図が一気に安定します。
製図試験では、最初の条件整理の精度がそのまま合否に直結すると言っても過言ではありません。
エスキスは、1/1000や1/400プランニングでほかの受験生と差をつけることが可能です。
エスキスが遅い人の共通点と速くなるための具体的な方法については、以下の記事からご覧いただけます。
やってはいけない勉強方法
エスキスで終わる
やってはいけない勉強方法の一つ目は、課題をエスキスまでで終わらせてしまうことです。
確かに、ランクⅢ・Ⅳをある程度回避できている人や製図試験のノウハウが既にあり、エスキス時間の短縮が目的の人であれば、このやり方でも問題ありません。
しかし、ランクⅢやランクⅣを頻繁に取ってしまう人は、作図まで完成させる練習をしなければ伸びません。
その理由はシンプルで、ランクⅢやⅣの原因はエスキスだけでなく、作図段階で多く存在するからです。
例えば、
- 法令違反
- 寸法のズレ
- 動線の不成立
といったミスは、エスキスの段階では気づけないことが多く、
実際に図面を書いて初めて明確になります。
また、講師がいる環境であれば、
- 正しい添削
- 客観的なランク評価
を受けることができるため、より効率的に改善できます。
エスキスで終わる練習を続けていると、なぜ自分がランクⅢ・Ⅳで止まっているのかを理解できないままになります。
ランクⅠを取りたいなら必ず作図まで行い、自分のミスを可視化することが重要です。
タイムを測らない
やってはいけない勉強方法の二つ目は、タイムを測らないことです。
エスキスが苦手な人でも、作図が遅い人でも、時間をかければランクⅠ相当の図面を作ること自体は可能です。
しかし、製図試験が難しい理由はそこではありません。
限られた時間の中で法令違反のないプランをまとめ、作図を完成させて最終チェックまで行う
この一連の流れを時間内に成立させることが求められます。
そのため、時間制限のない状態で模範解答のような完璧なプランを作っても、本試験の力はほとんど身につきません。
重要なのは、時間が足りない状況の中で理想通りでないプランでも成立させ、確実に図面を完成させることです。
この条件の中で試行錯誤を繰り返すことで、エスキスの判断力や作図の安定性が身についていきます。
製図試験では、時間制限の中での対応力がすべてです。
タイムを測らない練習は、この最も重要な力を鍛える機会を失っているのと同じです。
ランクⅢ・Ⅳを回避するための考え方
製図試験で最も重要なのは、完璧なプランを作ることではありません。
理想的なプランでなくても減点されない、成立した図面を作ることです。
多くの受験生は、
- 綺麗なプラン
- 理想的な動線
- 模範解答のような配置
このような完璧さを目指します。
しかし、この考え方がランクⅢ・Ⅳの原因になります。
製図試験では、
- 法令違反がない
- 各室の要求条件を満たしている
- 成立している
この3つが満たされていれば、合格ラインに乗ります。
逆に言えば、一つでも致命的なミスをすると一発でランクⅣになります。
「成立しているか」を最優先に考える
プランを考えるときは、
- 綺麗かどうか
- 理想的かどうか
ではなく、成立しているかどうかだけを基準にします。
多少形が悪くても問題ありません。
成立していれば合格の可能性は十分あります。
ギリギリの計画を避ける
特にランクⅣ(法令違反)になる人の多くは、距離や面積等において、ギリギリな計画をしています。
この状態は非常に危険です。
少しのズレで違反になり、そのままランクⅣに落ちる可能性があります。
合格する人は、必ず余裕を持たせた計画をしています。
エスキスで勝負を決める
製図試験は、作図ではなくエスキスでほぼ決まります。
- 条件整理
- 法規チェック
- プランの成立
これらができていれば、作図はただの作業となります。
逆にエスキスが未完成のまま進むと、どれだけ頑張ってもランクⅢ・Ⅳになります。
作図が速くならなくて困っている方は、以下の記事が参考になります。ぜひご覧ください。
まとめ
一級建築士の製図試験でランクⅢ・Ⅳになってしまう人には、明確な共通点があります。
- 法令違反に対する危機感がない
- エスキスが未完成のまま作図に進む
- 条件整理が甘い
これらはすべて、エスキス段階で防げるミスです。
また、勉強方法にも問題があります。
- エスキスで終わってしまう
- タイムを測らない
このような練習を続けていると、自分の弱点に気づけず、同じミスを繰り返すことになります。
製図試験で重要なのは、完璧な図面を作ることではありません。
減点されない図面を確実に完成させることです。
そのためには、
- 法令違反を絶対に出さない
- 条件整理を丁寧に行う
- エスキスで成立させてから作図に入る
この3つを徹底することが重要です。
製図試験は加点ではなく減点の試験です。
良い図面を作るのではなく落ちない図面を作る。
この考え方に変えることが、ランクⅢ・Ⅳを回避し、合格に近づくための最も重要なポイントです。
合格する人の共通点が気になる方は、以下の記事からご覧いただけます。



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